INTERVIEW

会長インタビュー

石塚 修 OSAMU ISHIZUKA

株式会社コーケン 会長

昭和28年千葉県夷隅郡大多喜町生まれ
昭和47年千葉県立茂原農業高校農業土木科卒
(高校在学中の昭和46年に測量士・卒業年の昭和47年に土地家屋調査士の資格取得)
昭和47年ふさ測量株式会社(千葉県茂原市)入社。
昭和58年独立し、石塚測量株式会社設立(のちの株式会社コーケン)、昭和54年土地家屋調査士石塚修事務所開業)

初代長生郡市地籍調査推進委員会委員長(平成20年~平成23年)
一般社団法人長生郡市地籍調査協会理事長(平成23年~)
千葉県土地家屋調査士会地籍調査プロジェクト委員(平成15年~)
千葉県地籍調査推進委員会総務企画部会長(平成16年~)
平成25年より地籍アドバイザー

― 株式会社コーケンとはどのような会社なのでしょうか。

石塚
全国の境界の地図、すなわち「地籍調査」に全精力を注ぎ、全国民の皆さまに貢献することを目指す会社です。「地籍」というのは、一筆ごとの土地の位置や形状、面積、境界、用途区分、権利関係などの情報を記録した、土地に関する“戸籍”のようなものです。これらの情報は登記所で管理されているのですが、登記所に保管されている地図や図面のなかには、1873(明治6)年の地租改正の際、一般の方たちによるやっつけ仕事でつくられた「公図」をもとにしたものが少なくない。基準点という概念もなしで作成されたために不正確な箇所が多く、境界や面積についても現実と食い違っているケースが数多く存在するのですね。こうした問題を解決するために、戦後の日本では、1951(昭和26)年に制定された「国土調査法」に基づいて「地籍調査」が進められ、登記簿や地図の修正が行われてきました。ところが、スタートから70年が経過した今日でも完了の目処が立っていないのです。実際、地籍調査が完了した地域は半分程度で、すべての土地の調査を終えるには少なくとも200年はかかると言われています。こうした現状を打破し、2050年までに全国の地籍調査を完了させる――。これこそまさしく私どものミッションであり、1983(昭和58)年の創業以来、約40年間の取り組みの集大成として追求しているんです。

地籍調査がなかなか進まないのはなぜでしょうか。

石塚
まず挙げられるのは、土地の境界の確認には、所有者をはじめとする関係者全員の合意が必要とされるため、かなりの時間と手間がかかるという点です。関係者に立ち会ってもらって境界を一つ一つ確認していくわけですが、財産に関わるだけにスムーズに進むケースばかりではありません。非常に人間臭く、泥臭い仕事が求められる調査なのです。それから、われわれ測量業界の問題もあります。この業界に身を置く人間であれば、誰もが地籍調査の重要性を理解しているのですが、膨大な時間と手間がかかるために敬遠する測量会社が少なくなかったのです。しかし、儲からないと思って誰も手を出そうとしないから、国や自治体の予算も少なくなっていく。予算が減るから、地籍調査に本腰を入れて取り組む会社がどんどんなくなっていく――。こうした悪循環が地籍調査の進捗を妨げる大きな要因となっていたのです。しかし、私どもが考案した「千葉長生方式」を採用すれば、こうした課題はクリアできる。たった20年で地籍調査を完了させることができる上に、測量会社も確実に利益を上げることができるんです。

―「千葉長生方式」の特徴について聞かせてください。

石塚
詳しくは拙著『みんなの地籍』(展望社刊)や新著『地籍調査で未来を拓く』(展望社刊)をご覧いただければと思いますが、一言でいえば、スケールメリットを最大限に活かす戦略です。従来の地籍調査は、一社で小規模な案件を受注するのが一般的でした。こうした事情もあって、調査にかかる時間や手間を考慮すると、どうしても割に合わない仕事だと思われていたんですね。この点、「千葉長生方式」では、先進企業と地域の測量会社が一体となって大規模な案件を受注し、契約事務などさまざまな面で効率化を図りながら、スピーディに調査を進めていきます。実際、私たちは地元の測量会社15社で、長生郡(約226㎢)の地籍調査を進めているのですが、その半分に当たる100㎢超の調査をわずか10年で完了させることができました。この「千葉長生方式」を全国規模で展開し、2030年から2050年までの20年間で地籍調査を完了する――。これが私たちの目標なんですね。この歴史的なプロジェクトを実現するための準備段階として、現在は広報・啓発活動に力を入れています。2027年頃を目処に、地籍調査を促進するための時限立法の制定や、全国2万人規模の技術者の確保・養成を進め、2030年までに本格的な調査のための基盤を、業界を挙げて整えたいと考えています。

―地籍調査が完了すると、一般の人々にもメリットがあるのでしょうか。

石塚
もちろんです。例えば、不動産会社が土地の売買を行う際、これまでは3〜4カ月もの期間をかけて隣地との境界を確認・確定する必要がありました。その際、境界が確定できず、契約が不履行になるケースも少なからず存在したのですが、地籍調査が完了すれば確認・確定というプロセスそのものが不要になるため、即座に取引できるようになります。また、土地の境界線が入った三次元データがあれば計画・設計の完成時のシミュレーションや潰れ地面積も瞬時に算出するなど自動化により、さまざまな用途に活用できるでしょう。さらに将来的には、人々の“命を守る地図”を創ることも夢ではありません。大規模災害が発生したときに刻一刻と変わる状況を把握し、「〇〇さんの土地に危険が迫っている」「30分後に浸水の可能性がある」という具合に、ほぼリアルタイムでピンポイントかつ高精度のアラートを出すことができるようになるはずです。つねに想像力を膨らませて、新たな発想を出していくことが大切です。

― 石塚会長が培ってきた地籍調査のノウハウを継承していくことも大切ではないでしょうか。

石塚
そうですね。この6年間で約15名の新入社員を採用しましたが、ありがたいことに離職者は一人もいません。技術者の高齢化が進行している測量業界において、30代未満の社員が20人も在籍している会社は稀有といっていいでしょう。新入社員の多くは文系出身ですが、何の問題もありません。測量の現場が厳しい自然との戦いであることに変わりはありませんが、ITの進化とともに自動化・機械化が進んだ今日、測量業務のほとんどは機械がやってくれます。むしろ大切なのは、明確な目的意識、熱い志があるかどうかなのですね。「2050年までに全国の地籍調査を完了させる」という目標は、若手のモチベーションの源泉になるはずです。将来的には若い社員が成長し「千葉長生方式」を全国に広めていってほしい。そして、国民の皆さまに貢献する仕事への挑戦を通して、自らの未来を創造していってもらいたいと思っています。

書籍紹介

みんなの地籍

  • 地籍調査に苦悩している市町村の首長さんや職員の皆さん
  • 地籍調査のメリットを知らない住民の皆さん
  • 前向きに取り組めない測量会社の経営者や土地家屋調査士の皆さん

次世代に先送りできない地籍調査。この本を手がかりにすると200年かかる地籍調査の完成が20年でできます。
一日も早い地籍調査の完了を目指すためにこの本を読み、明日の実施につなげてください。

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